日本を離れる前に必ず確認!外国人のための脱退一時金 完全ガイド

毎月の給与から引かれていた年金保険料で帰国するときに、そのお金はどうなるか知っていますか?実は、正しく手続きをすれば、支払った年金保険料の一部(最大5年分)が戻ってくる制度があります。それが「脱退一時金」です。

知らないまま帰国してしまうと、請求できる権利が消滅してしまいます。この記事では、脱退一時金の受け取り方をわかりやすく解説します。

脱退一時金とは?制度の基本を理解する

年金制度の仕組みと外国人が直面する問題

日本で働く20歳以上60歳未満の外国人は、「国民年金」への加入が必要です。

さらに、法人に勤めている場合や、一定の労働条件(労働時間・賃金など)を満たす場合、企業規模に関係なく厚生年金の対象となります。のもとで働く場合は、原則70歳になるまで「厚生年金保険」にも加入しなければなりません(参照:日本年金機構)。

これは日本国籍の有無にかかわらず、条件を満たす全員に課せられる義務です。

ところが、老齢年金を受け取るためには最低10年(120か月)以上の加入期間が必要です。日本を10年未満で離れる多くの外国人にとって、払った保険料が「掛け捨て」になってしまう問題が生じます。

脱退一時金:保険料を無駄にしないための制度

脱退一時金とは、将来的に年金として受け取ることが難しい場合に、支払った年金保険料の一部を払い戻しする制度のことです。主に外国人が利用する制度ですが、要件を満たせば国籍に関わらず対象となる場合があります。

帰国後に日本年金機構へ請求することで、支払った保険料の全額ではありませんが、一定の計算に基づいた金額(最大5年分の一部)が支給されます。

・脱退一時金の制度が創設:1994年(平成6年)
・支給上限の拡充:2021年4月に3年→5年(60か月)に改正(特定技能1号の最長在留期間5年に合わせた法改正)
・公式情報:🔗 日本年金機構「脱退一時金に関する手続きをおこなうとき」

受け取れる条件(支給要件)

以下のすべての条件を満たしている場合に、脱退一時金を請求できます。
1つでも満たさない場合は対象外です。

支給要件5つ(すべて満たすことが必要)

条件詳細
日本国籍を持っていない日本国籍を取得している場合は対象外
年金の加入期間が6か月以上10年未満保険料未納期間は除く。
10年以上あると老齢年金の対象になるため除外
障害年金を受け取ったことがない現在受け取っていない、かつ過去にも受け取ったことがない
日本国内に住所がない日本を出国して、住民票を抹消していること
最後に年金資格を失った日から2年以内2年を過ぎると請求の権利が消滅するため要注意

⚠️ 注意:「2年以内」の起算点について
退職・資格喪失した日に日本に住所があった場合、2年の起算は「その後初めて日本の住所がなくなった日」から始まります。

受け取れない(支給対象外)の場合

・現在も年金の被保険者である(まだ日本で働いている)
・日本国内に住所がある(まだ日本に住んでいる)
・障害基礎年金などを受け取ったことがある
・最後に資格を失った日から2年以上が経過している

いくらもらえる?金額の目安と計算方法

脱退一時金は「国民年金」と「厚生年金保険」それぞれに対して計算します。
国民年金のみに加入していた方(従業員5人未満の個人事業主のもとで働いていた方など)の支給額は下記表の通りです。

また、支給額計算の上限 (2021 年 4 月より 36 月(3 年)から 60 月(5 年)に引き上げられました。) 

厚生年金保険の脱退一時金

法人・大きな事業所に勤めていた方(ほとんどの会社員)は、厚生年金保険の脱退一時金を受け取れます。金額は個人の給与・勤務期間によって異なります。

計算式:
最後に保険料を納付した月が属する年度の保険料額 × 2分の1 × 支給額計算に用いる数

例えば:
月給20万円で5年間勤務した場合、脱退一時金は約53万円前後となり、支払った保険料の一部が返還される仕組みとなっています。これは実際に支払った保険料総額ではなく、制度に基づき算出された一部の金額です。

「支給額計算に用いる数」は、保険料納付済期間等の月数の区分に応じて定められています。最後に保険料を納付した月が、2026年(令和8年)4月から2027年(令和9年)3月の場合の具体的な支給額は、以下のとおりです。

※最後に保険料を納付した月が2026年(令和8年)4月から2027年(令和9年)3月の場合

保険料納付済期間等の月数(※)支給額計算に用いる数支給額(令和8年度)
6月以上12月未満653,760円
12月以上18月未満12107,520円
18月以上24月未満18161,280円
24月以上30月未満24215,040円
30月以上36月未満30268,800円
36月以上42月未満36322,560円
42月以上48月未満42376,320円
48月以上54月未満48430,080円
54月以上60月未満54483,840円
60月以上60537,600円

※なお、最後に保険料を納付した月が2021年(令和3年)3月以前の場合は、36月(3年)を上限として支給額が計算されます。

出典:🔗日本年金機構「国民年金の脱退一時金の金額」

税金(源泉徴収)について

脱退一時金から20.42%の所得税が源泉徴収されます。
ただし、帰国後に「還付申告(税金の払い戻し)」の手続きをすることで、所得税を取り戻すことができます。

請求の手順(STEP1〜STEP5)

⚠️ 大前提:脱退一時金の請求は「本人または委任した代理人」が行います。会社・雇用主が代わりに手続きするものではありません。

STEP 1:帰国前に書類を準備する

帰国前(日本に滞在している間)に以下の書類を準備しておくと、帰国後の手続きがスムーズに進みます。

書類備考
1脱退一時金請求書日本年金機構の公式サイトからダウンロード可能(14か国語対応)
または年金事務所・市区町村でも入手できます。
2パスポート(旅券)の写し氏名・生年月日・国籍・署名・在留資格が確認できるページ
3日本国内に住所がないことを示す書類住民票の除票の写し、またはパスポートの出国日確認ページ。
転出届を提出済みの場合は不要となることがあります。
4受取先口座の確認書類金融機関が発行した証明書、または請求書の「銀行の証明」欄への記入
5基礎年金番号がわかる書類基礎年金番号通知書・年金手帳など
6委任状(代理人が手続きする場合のみ)

🔗 請求書ダウンロード: 日本年金機構「脱退一時金に関する手続きをおこなうとき

請求書は14か国語に対応しています。
英語/中国語/韓国語/ポルトガル語/スペイン語/インドネシア語/フィリピノ(タガログ)語/タイ語/ベトナム語/ミャンマー語/カンボジア語/ロシア語/ネパール語/モンゴル語

STEP 2:市区町村に「転出届」を提出する

帰国前に、住んでいる市区町村の役所に転出届(住民票の抹消)を提出します。
これにより「日本国内に住所がない」という条件を満たすことができます。

⚠️ 転出届を出さずに帰国した場合でも、パスポートの出国日確認ページで代用できますが、転出届を出しておくとより手続きがスムーズです。

STEP 3:帰国する

出国後、日本国内に住所がない状態になってから請求手続きが可能となります。

⚠️ 重要:日本に住所がある間は請求できません。
出国前に郵送で請求書を送る場合は、転出(予定)日以降に、日本年金機構に到達するよう送付してください。

STEP 4:日本年金機構に請求書を提出する(帰国後)

帰国後、準備した書類を日本年金機構へ提出します。
提出方法は以下のとおりです。

・郵送:海外から日本年金機構本部(または各共済組合等)へ郵送
・電子申請:オンラインでの申請も可能
・窓口:一時帰国など就労以外の目的で来日した場合は、年金事務所または街角の年金相談センターでも提出可能

提出先:
〒168-8505 
東京都杉並区高井戸西3-5-24
日本年金機構 事業企画部 給付企画課
または各共済組合等(加入していた制度によって異なる)

STEP 5:脱退一時金の受け取り

書類に不備がなければ、請求書受付後おおよそ4か月後に指定の口座へ振り込まれます。日本円で支給され、海外口座へ送金される際に各国通貨に換算されます。

為替レートは支給決定された月の平均為替レートをもとに計算されます(申請時のレートではない点に注意)。振込と同時に「脱退一時金支給決定通知書」が送付されます。

絶対に知っておくべき3つの注意点

注意点①:脱退一時金を受け取ると、年金加入期間がゼロになる

脱退一時金を受け取ると、その対象となった期間(日本での年金加入期間)が、すべて「加入していなかった」ものとして扱われます。

例えば、日本で3年働いて脱退一時金を受け取った後、再度来日して日本で働いた場合、その3年間は年金加入期間としてカウントされません。ただし、再度来日して年金に加入し、再度脱退一時金の支給条件を満たした場合は、2回目の帰国時に再び請求することができます。

注意点②:帰国後、できるだけ早く手続きを行う

「最後に年金の資格を失った日から2年以内」という期限があります。忙しさのあまり手続きを忘れると、権利が消滅して請求できなくなります。帰国後すぐに手続きを始めることをおすすめします。

注意点③:請求書の提出タイミングに注意する

日本にいる間(住所がある間)は請求できません。出国前に郵送で手続きをする場合は、転出予定日以降に日本年金機構へ到着するようタイミングを計算して送付してください。

社会保障協定がある国の方は特に注意!

社会保障協定とは?

社会保障協定とは、日本と特定の国との間で、年金保険料の二重支払いを防ぎ、制度によっては日本と母国の年金加入期間を通算できる仕組みです。

ただし、協定の内容は国によって異なり、すべての国で加入期間の通算が認められているわけではありません。社会保障協定を結んでいる国の出身者の場合、日本での年金加入期間が母国の年金制度と通算されるケースがあります。

⚠️社会保障協定を結んでいる国の方が脱退一時金を受け取る場合の重大な注意点
脱退一時金を受け取ると、その期間の日本での年金加入期間は無効となり、母国の年金制度との通算対象からも除外されます。

つまり、以下の2つの選択肢を慎重に比較する必要があります。

選択肢内容メリットデメリット
A. 脱退一時金を受け取る帰国後すぐに現金で受け取る早期に資金を受け取れる将来、母国の年金への通算対象外となる場合がある
B. 脱退一時金を受け取らない日本での年金加入期間を母国と通算し、将来の年金として受け取る将来の老齢年金に有利となる可能性があるすぐに現金は受け取れない

母国に将来の老齢年金制度があり、長期間働く予定がある方は、脱退一時金を受け取る前に十分に検討してください。

社会保障協定を結んでいる国(2026年5月時点)

ドイツ・イギリス・韓国・アメリカ・ベルギー・フランス・カナダ・オーストリア・オランダ・チェコ・スペイン・アイルランド・ブラジル・スイス・ハンガリー・インド・ルクセンブルク・フィリピン・スロバキア・中国・フィンランド・スウェーデン

※イタリアは署名済み・未発効。イギリス・韓国・中国との協定は「保険料二重負担防止」のみ(加入期間の通算なし)
🔗 最新の社会保障協定締結国:日本年金機構「社会保障協定」

よくある質問(FAQ)

退職したらすぐ請求できますか?

いいえ。退職後も日本に住所がある間は請求できません。日本を出国し、住民票が抹消された後に請求手続きを行ってください。

日本を出国した後、しばらくしてから請求しても大丈夫ですか?

「最後に年金の資格を失った日から2年以内」という期限があります。2年を過ぎると請求できなくなるため、できるだけ早く手続きを行うことをおすすめします。

会社が代わりに手続きしてくれますか?

脱退一時金の申請は、本人または委任を受けた代理人が行う必要があります。会社が代理人となることも可能ですが、その場合は委任状の提出が必要です。

国民年金と厚生年金の両方に加入していました。どちらも請求できますか?

加入していた期間に応じて、それぞれの制度に基づき合算して計算されます。別々に申請する必要はありません。

ゆうちょ銀行の口座に振り込んでもらえますか?

いいえ。ゆうちょ銀行および一部のインターネット専業銀行では受け取れない場合があります。受け取り可能な金融機関の口座を指定してください。

日本に再入国する予定があっても請求できますか?

転出届を提出して出国した場合は請求可能です。ただし、転出届を提出せずに再入国許可(みなし再入国許可)で出国した場合は、再入国許可の有効期間中は年金の被保険者とみなされるため、請求できません。

税金は引かれますか?

脱退一時金には20.42%の所得税が源泉徴収されます。ただし、帰国後に還付申告を行うことで払い戻しを受けることが可能です。

申請回数に制限はありますか?

回数に制限はありません。再度日本で就労し、支給要件を満たした場合は、帰国時に再び請求することができます。

まとめ:帰国前に必ずやるべきこと チェックリスト

やることタイミング
脱退一時金の支給要件を確認する帰国決定後すぐ
脱退一時金請求書をダウンロード・入手する帰国前(日本にいる間)
基礎年金番号がわかる書類を準備する帰国前
市区町村に転出届を提出する帰国前
受取先の海外口座情報を確認する帰国前
社会保障協定の有無を確認する帰国前
帰国後、できるだけ速やかに日本年金機構へ書類を提出する帰国後2年以内

公式情報源・参考リンク

・請求書のダウンロード、制度の公式案内:脱退一時金の手続き
・よくある質問:脱退一時金のFAQ
・協定締結国の一覧、制度の詳細:社会保障協定
・ねんきんダイヤル(電話相談):0570-05-1165(平日8:30〜19:00、第2土曜日8:30〜17:30)

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